「名古屋で長く暮らしてきたけれど、この歳になって部屋を借り替えられるだろうか」——愛知県で住まいを探すシニアの方から、こうした相談をよくいただきます。オーナーが高齢者の入居に慎重になる傾向はたしかにありますが、愛知県は名古屋市を中心に賃貸住宅の層が厚く、市内と郊外を上手に使い分ければ選択肢は十分にあります。この記事では、全国の公的データを手がかりに、愛知県でシニアが賃貸を探すためのポイントを整理します。
全国データで見る「需要」と「供給」
まず全体像を数字で確認します。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日現在)によると、全国の空き家率は13.8%で過去最高となり、このうち賃貸用の空き家は443.6万戸にのぼります[1]。一方で、65歳以上人口は総人口の29.3%を占め、過去最高を更新しています[2]。さらに、ひとり暮らしの高齢者世帯は今後も増える見通しです[3]。借りたいシニアは増え、貸せる部屋も余っている——この「借り手と空き部屋がともに増える」構図は、人口の多い愛知県でも同じです。空き部屋を長く空けておきたい大家はいないため、備えを整えたシニアはむしろ歓迎される場面が増えています。
愛知県で探すときの考え方
愛知県は東海地方の中心で、名古屋市を核に賃貸住宅の供給が厚いエリアです。物件数が多いということは、それだけ「高齢者の受け入れに前向きな大家」に出会える可能性も高いということ。数の多さを味方につけ、年齢で門前払いされにくい窓口を選ぶのが近道です。名駅(名古屋駅)や栄など都心部の駅近に絞りすぎると家賃が上がりやすいので、市内でも千種・昭和・瑞穂・港などの区、さらに尾張エリア(一宮・春日井・小牧)や西三河(豊田・岡崎・刈谷・安城)まで視野を広げると、家賃と条件のバランスがとれた部屋を見つけやすくなります。首都圏と比べると全体に家賃水準が抑えめで、同じ予算でも広めの間取りを狙いやすいのは愛知の強みです。
探すときは、家賃だけでなく「暮らしやすさ」も一緒に考えると失敗が減ります。名古屋は地下鉄(東山線・名城線・鶴舞線・桜通線など)に加え、JR・名鉄・近鉄・あおなみ線が張りめぐらされ、公共交通で通院や買い物がしやすい街です。一方で郊外は車移動が前提の地域も多いため、運転を控えるようになったときに備え、駅やバス停までの距離、かかりつけの医療機関・スーパー・区役所への通いやすさを優先順位づけしておきましょう。名古屋市内は全体に平坦で歩きやすい地形が多く、坂の負担が少ないのもシニアには安心材料です。あわせて、玄関やお風呂の段差、エレベーターの有無など、日々の身体に負担の少ない住まいかどうかも大切な視点です。条件を全て満たそうとすると物件が絞られすぎるため、「譲れない条件」と「あれば嬉しい条件」を分けておくのがコツ。エリアを1つに固定せず、複数の候補エリアで並行して探すと、受け入れに前向きな物件に当たる確率が上がります。
また、内見や申し込みの際には、後述の「備え」をあらかじめ伝えておくと、話がスムーズに進みます。オーナー側は判断材料が多いほど安心できるため、こちらから先に情報を出す姿勢が、結果的に交渉を有利にします。基本の準備の全体像は高齢者・シニアの賃貸の探し方|断られない5つの準備にまとめています。
断られにくくする備え
愛知でも、基本の備えは変わりません。家賃保証会社の利用、緊急連絡先の用意、そして見守りサービスの活用です。オーナーが最も気にするのは「万一のときにすぐ気づけるか」という点。安否確認の仕組みや、原状回復・家賃損失に備える保険をあわせて示せれば、交渉は前に進みやすくなります。補償の範囲や上限額は商品によって異なるため、契約前に内容を確認しておくと安心です。あわせて、国は住宅確保要配慮者(高齢者などを含む)が入居しやすいよう、登録された物件を活用する「住宅セーフティネット制度」を整えており、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅を探す手がかりになります[4]。こうした公的な仕組みも視野に入れておくと選択肢が広がります。
まとめ:愛知は「名古屋市内」と「郊外」を使い分ける
愛知県は物件が多いぶん、高齢者を歓迎する窓口や大家に出会える機会も豊富です。発達した鉄道網を活かせば、名古屋の利便を保ちつつ、尾張・三河の郊外で家賃を抑えるという選び方もできます。全国的に賃貸用の空き家が増えているいま、備えを整えて前向きな窓口を選べば、シニアの住まい探しは決して不利ではありません。単身の高齢者でも相談できる先は着実に増えています。一人で抱え込まず、まずは高齢者対応に慣れた窓口へ相談することから始めてみてください。他エリアのポイントは大阪府で高齢者・シニアが賃貸を借りるには?や神奈川県で高齢者・シニアが賃貸を探すコツもあわせてご覧ください。焦らず、条件と備えを整理して臨めば、納得できる住まいはきっと見つかります。
- 空き家率13.8%・賃貸用443.6万戸(2023年):総務省『令和5年住宅・土地統計調査』。stat.go.jp
- 高齢化率29.3%(2024年10月1日現在):総務省統計局『人口推計』。stat.go.jp
- 65歳以上の単独世帯の増加:国立社会保障・人口問題研究所『世帯数の将来推計(全国推計・2024年推計)』。ipss.go.jp
- 住宅セーフティネット制度(住宅確保要配慮者への居住支援):国土交通省。mlit.go.jp